スタジオ

スタジオに入る事は
バンドを始めた中学生の頃からの
夢だった

密室の中で
アイディアを出し合い
録音した音を
大きなスピーカーで
大音量で再生する

小さい頃
日曜日の朝と
夜中のイヤホンでしか
音楽を存分に
聴く環境はなかった

マーシャルのアンプを
何十台も重ねて
流れてくる海外の
ロックには憧れた

自分たちの演奏した音を
スタジオで聴くことは
驚くほどに気持ち良かった

限られた時間の中で
次々と湧き出るアイディアを
具現化するには
それなりの経験と読みがないと
収まりがつかなくなる

構築されたライブでの
一発勝負とは
別世界の完成形を目指す

しかし
いざやってみると
納得いく完成形には
辿り着くわけもない

それが欲に繋がる

気持ちではなく
テクニックや
自分を良く見せようとする
邪念が働きだすからだ

そんな気持ちを
先読みして最短に
ゴールへ導いてくれるのが
レコーディング•ディレクターだ

その出会いが
後の音楽人生を左右する

お金を出して
聴いてくれる人の顔など
知る由もないのだから

それを
教えてくれたのは
自分にとっては
兄であり
フジパシフィックミュージックの岩崎さん
エンジニアの森本さん
テイチクの森さん

その人たちによって
導いてもらえた言葉を
今も忘れない

そしてできた
アルバム
「廃盤」

先読みしすぎた。

今でも
そのレコーディングでの
情熱は忘れない

故に
その情熱以上を
保つことができなければ
続けることも難しい




「廃盤」バナナベンダーズ