80年代と何が違うのか

昔は良かったな~とか懐かしいな~とかではない。
東京新聞の「80年代ノート」というコラムが好きで毎日読んでいる。
かろうじて自分も80年代には音楽業界で仕事をしていた身として感じることはたくさんある。アナログからデジタルへ、レコードからCDへ、CDから配信へ、時間と共に変化に対応できれば余り感じないけど、振り返れば物凄いスピードで変化しているのかもしれない。その度毎に使用できる機材やハードウエアを買い替えなければ仕事にならなかったり、アウトプットが変わる度に新しい契約を更新するわけで、何もないところから音楽を作り出す方法自体は何も変わらないけど、聴いてもらう為にするべきことはいつも変化を求められる。
しかし肝心なのは人の価値観も変化していることだ。
出来上がった歌をレコード会社が社運を懸けてプッシュするにあたり、無償で応援してくれる媒体は珍しい。ただ80年代のヒット曲の背景には無償で動いてくれている人の力を感じる。厳密には一緒にヒットを生み出した達成感や功績は後々の仕事に影響するわけだから無償ではないのかもしれない。しかし現代のように応援するからいくらください、とか番組のエンディングで使用してもいいからいくら払えとかそんなことではなかったはず。1人のアーティストや楽曲をテレビやラジオ、新聞、雑誌が協力し更にはメディア間での連携もヒットに導いていたケースは珍しくなかった。そこにあるのは利益至上や効率至上だけではない人と人の信頼関係が第一だったのではないだろうか。
Covid-19以前から、電話よりもメール、直接会うよりもメールで済ませるやり取りには過度を感じていたが、人と人のやりとりがメールやリモートで益々可能になることが当たり前とは言え、やはり1時間長々とzoomでやり取りするより15分でも直接顔を見合わせて話ができた方が情報量は遥かに多いし「感じあう」力の増幅は比較するに及ばない気がする。
昔、恩師が常に口にしていたのは「ヒットは人から」。この言葉が時代錯誤でない事だけは確かだ。