Back In A Day #1


今の様に自宅に録音システムがなくファイルをメールで送るなんて考えもつかなかった時代、只管作った音源を機材ごと外のスタジオに全て運び入れMIDIを繋ぎ直し各音源モジュールから丁寧に1台ずつアウトプットをエンジニアと調整しながらテープに録りこむ作業。その時間は13-4時間もかけていただろうか。

最終形を想像しながらも11つの音源の最大特性を活かし録り込むがテープに入ると音が変化するのでそれも計算しながらレンジ感を出していく。


オールインワンでバリエーションにも優れ予め調整済みのバランスの音源をPC1台からファイルにしてUSBメモリーに収めて手ぶらでスタジオに録音しに行くなんて、80-90年代には考えられなかった。


自宅から配線を全部抜き、ラックに納めて搬入搬出を自宅とスタジオで12回やらなければならなかったのだから腰も痛くなる。


とは言っても、後々聴き返してみると、その面倒な準備があったからこそ複数で作り上げる音の質感も自然と生まれていた。


90年代1週間の半分以上はどこかしらのスタジオで作業をしていた時期がある。

同じような事をしたくないが為に変なアイディアも試して失敗したり採用してみたりすることも頻繁にあった。


その中で、今思うと笑ってしまうのが、

リミックスを任された時。

(リミックスはアーティストのヴォーカル・トラックだけを抜いたテープを借り、オケを全て作り変えてしまう作業。)

当時はマルチテープでミックスした2ミックスをアナログ1/2inchテープに落として納品する贅沢な手法を好んでいた。

デジタル・テープだけで落とすより自然のコンプレッションがかかり纏まりのある質感に仕上がるからだ。しかしテープ代が加算するのでディレクターに理解がないとなかなかこちらから申し入れできない。

そのアナログ1/2に落とす段階で1コーラス目と2コーラス目のブリッジに物足りなさを感じ1小節分テープを切り逆さまに繋いでみた。(今だとファイルで簡単にできちゃう)所謂逆再生になるのだが、それでも物足りなかった為に切った1小節のテープをスタジオにいる関係者全員が順番に手でくしゃくしゃにしてみようと言う事になった。勿論破れない程度に。

逆さまに繋ぎしかもくしゃくしゃになった部分がどう聴こえるか再生してみないとわからないが、何度もピンチローラーを通過して再生すると音が元に限りなく戻ってしまいそうなので1回しか再生しないことになった。

TD済みのマスターは1小節分がくしゃくしゃになった状態のテープを納品してマスタリングで1回だけ再生してもらうように頼んだのだ。よく怒られなかったなぁ。

その1小節だけは今のテクノロジーでは再現できない変な音に仕上がったことは言うまでもない。


さて問題です。その1小節を挿入したリミックスは次のうちどれでしょうか。


Forever Memories / w-inds.

Sanctuary ~淋しいだけじゃなない / 東京パフォーマンスドール

③ごめんね... / 髙橋真理子

All My True Love / SPEED


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