兄の声

 複数の歌い手が次々と持ち歌をスタジオで披露している。ぼくはそのスタジオにいてそれぞれの歌の上手さに感動している。

 合間にぼくの携帯に知らない番号から電話が入る。直ぐにでると

「おー、俺いまスタジオにいるんだけどさぁー….

兄貴があのいつもの低い声で電話をかけてきた事に驚き、ぼくは「兄貴なの?どこのスタジオにいるの?…..」と涙が溢れだし何度も聞くがその後は通話が繋がったまま無言だ。

 ぼくは床に体を埋めるように泣きながら周りの人に死んだ人と交信できてる事実を訴えかける。

 何度も何度も兄貴に「どこ?」「聞こえてる?」と言っても返事がない。「切るよ?」と言った瞬間、兄貴の方から電話が切れた。

 着歴は非通知になっていた。

 兄貴のはっきりとした声だけが耳に残ったまま目覚めたのは深夜3:42312日)暫く背筋がゾクゾクとする。

 とてもリアルな兄貴の声だけが今も耳に残っている。

 兄は今もどこかのスタジオで誰かを見守っている気がした。