展覧会


我が両親は油絵の教室で出会い結ばれ兄と吾輩が誕生したらしい。

公務員の父は日曜日になると家具調のビクター2号機ステレオで朝は必ずクラシックのレコードをかけてくれた。

ドーナツ盤の7インチが4〜5枚ずつ入ったクラシックの全集みたいなものがずらっと棚に並んでいたのを覚えている。

その中でチャイコフスキーのスラブ行進曲が好きで何度も繰り返しかけてもらった。


ちゃぶ台にはガラス製の馬鹿でかい灰皿がいつても置いてある。

ヘヴィスモーカーだった父は朝からもくもくとハイライトを何本も吸い、トーストにコーヒー、自分はピーナッツバターを山ほど塗ったトーストにコーヒー牛乳が定番の朝食を済ませると錦糸町のテレミナ(当時地元で1番人気の駅ビル)を横目に建つ江東デパートという当時でも一昔前の歴史ある百貨店に父と行くのが楽しみだった。

そこには珍しく画材道具専門店があったからだ。

画材道具屋の隣が切手屋だったお陰で、父が絵具を選んでる間、美しい絵柄の切手に魅了され欲しくなっては強請り、いつの間にか切手収集をしていた。


父は午後にはキャンバスに向かっていた。たまに油絵の扱い方から描き方を教えてもらった。

小さい頃から上野へには展覧会があると良く家族で足を運んでいた。


大人になってから意識して展覧会に行く事も減ってしまっていたが、近所に東京都現代美術館ができてからは小さい頃を思い出し身近な機会となった。


先日、GENKYO 横尾忠則展に行って来た。


名前は有名でもそれ程作品わ知ってたわけではなかった。


兎に角、作品全てに途轍もない力を感じ圧倒された。

気がつけば昼食を取ることも忘れ3時間近く絵画を観ていた。

出展の規模も然ることながら、描かれた先の想像と空間が無限に自分の頭に巡り何度も観たくなる中毒性を感じた。

展示方にもストーリーが施され演出されている。

何より元気になって帰ってきた。


コロナ禍で疲弊する社会の中で文化や芸術の大切さと必要性をあらためて示してもらっている。


まだ観ていない人には是非お薦めしたい。


GENKYO 横尾忠則  | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO