昔の居間

昔の実家は
玄関の引戸を開けると
自転車一台が入る程の土間から
すぐ居間になっていた

プッシュホンなどなかったので
友達は引戸を少しだけ開けて

「工藤くん!(本名)」と
遊びに来るのも普通のことだった

引戸を開けると
すぐ居間なので
時間によっては
居間でTVを観ながら
家族全員が一斉に
友達の方を向く
威圧的な作りでもある

食事をしてようが
新聞を読もうが
親父がタバコや着替えをしようが

ガラガラと誰かが
入って来ると

家族の生活風景が
一目瞭然となるのだ

そんな居間には
遊びたくなると
勝手に出たり
眠くなると勝手に
鳥籠に帰る
手乗りインコも
日常的に放し飼いだ

米屋が御用聞きに
玄関を開けた際には
ここぞとばかり
外の世界へ
飛び出したきり
帰らないインコとなってしまった日には
泣いたものだった

しかし
その実家の
今はもう無い居間は
最近なぜか夢に
良く現れる

昨日は
知り合いの女性ピアニストと
その居間で
会話を楽しみ
突然
ちゃぶ台の周りを
女性ピアニストが
ぐるぐるふざけながら
周りだしたりした

人の夢の話ほど
聞かされてつまらないものはないが

そんな夢に目覚め

何故か

朝から幸せな気持ちになった

ただそれだけ


と言う話。